しばらく前のこと、ツーリング先で再出発しようとしたら、突然セルがうんともすんとも言わなくなりました。インジケーターは光っており、バッテリー電圧は十分にあります。
「リダクション式のスターターだし、叩けば電気の接点が戻るはず!」と信じ、お気に入りの車体に傷がつくのもお構いなしに、工具の柄でセルモーターをガンガンと親の敵のようにシバいてみましたが、ピクリともしません……。
仕方なくコンビニの駐車場で、一人で寂しく「押しがけ」に挑戦するも、車重のあるハーレーは全くかかる気配なし。
絶望に暮れながら、バイクにまたがって右側に車体をグッと傾けた状態で(←ここが後々の伏線になります)必死に押したところ、奇跡的にセルが回り、無事に始動!
出先でエンジンを切るのが怖すぎたので、一度もイグニッションを切ることなくノンストップでそのまま帰宅しました。
後日、ガレージでコッパー(銅)ハンマーを使ってセルをコンコンと叩いてみたら、何事もなかったかのように無事に始動。やっぱり接点の固着(寿命)かな?と思い、そのまま次のツーリングに出かけたら、見事に無事完走。治ったのかな?とホッとしていたのですが、悲劇はそんなに甘くありませんでした。
翌日のショートツーリング先で、またしても同じ「セル無反応」が再発。
今度はハンマーセットを持参していましたが、いくら叩いても、擦っても、祈っても、セルは微動だにしません。駐輪場で途方に暮れていたところ、居合わせた親切なバイカーさんに「押しがけ、手伝ってくれませんか?」と声をかけました。
二人で息を合わせて押してもらい、一発で力強く始動!本当にありがとうございました、あの時のDトラッカーのライダーさん……(涙)。
トラブルシューティング:まずはリレーを疑って安価に交換
車屋の友人に相談したところ、「その形のリレーは、車用もバイク用も中身は全部いっしょだよ」とのこと。まずは一番安くて交換が簡単な「スターターリレー」から変えてみることにしました。
リレーを新品に変えてテストするも、結果は「やはりダメ」。
ボタンを押すと、リレーの「カチッ……」という小さな作動音が切なく鳴るだけです。
テスターを当てると、セルモーター本体まではしっかり電圧が来ている(っぽい)ので、セルモーターの内部接点である「プランジャーの摩耗」を疑うことに。
Webikeで安くて送料無料だった「スタータープランジャーリビルドキット」を購入しました!
いざ分解!マフラー装着状態でのギリギリDIY
分解を始める前に、ショートして大火花が散るのを防ぐため、バッテリーのマイナス端子は絶対に外しておきます。
セルモーターのカバーを開けるには、マフラーを外した方がスペースが確保できて楽なのですが、マフラー脱着はガスケット交換や排気漏れ対策が非常に面倒。
「横着しよう!」ということで、マフラーを付けたままの極小スペースで挑戦することにしました。
セルモーターカバーを固定している、六角のボルト3本を緩めていきます。
ここは普通のL字型レンチではマフラーに干渉して入りません。軸の長い「ロングドライバータイプ」の六角工具が大活躍してくれました。これがないと、マフラーを外さない限り作業は絶望的です……!(6mmか4mmだったと思いますが失念しました)
ハーレーなのでインチ工具を使ってリード線ナットを外そうとしていたのですが、薄型ナットへの引っかかりが非常に甘く、なめてしまいそうな感覚でした。
おかしいなと思いミリ工具を当ててみたところ、なんとピッタリ(12mmと14mmが必要でした)。アメ車整備あるあるですが、怪しい時はミリを当ててみるのが正解ですね。
衝撃の事実:リード線に苦戦していると、あるカプラーが……
マフラーの隙間からリード線ナットを外そうと四苦八苦していたその時。
視界の隅で、ひとつの黒いカプラーが不自然にぷらーんと垂れ下がっているのを見つけました。
「……ん? この線の相手先はどこだ?」
接続先を探してみると、セルモーターのすぐ下でした。
「これ、もしかしてスターターの信号線(トリガー線)じゃね……?」
そう。最初のトラブル時、車体を右側にグッと傾けて押した拍子に一瞬セルが回ったのも、傾けたことでこの「外れかけて接触不良を起こしていたカプラー」が奇跡的に一瞬だけ繋がったからだったのです。
つまり、不動トラブルの真の原因はプランジャーの固着ではなく、単なるカプラーの緩み(抜け)でした。
「でも……リビルドキットもう買っちゃったし、ここまでバラしたし。男ならオーバーホール(OH)を完遂するしかないな!」
ということで、予定通りプランジャーの交換作業を進めます(笑)。
こちらが新旧のプランジャーの比較です。
取り外した古いプランジャー(写真下)を見てみると、長年のスターター作動時の大電流によるスパークで、銅の接点部分にクッキリと深い段差(摩耗)がついていました。
信号線が真犯人だったとはいえ、このプランジャーの摩耗具合を見るに、遅かれ早かれ寿命で接点不良を起こしていたのは確実です。予防整備としては大正解のタイミングでした。
ネットの参考配線図を調べると、まさにこの線でした。実車では「緑色のライン」が入っている細い配線です。
「バッテリーからの極太のメインリード線以外に、当然スターターを作動させるためのトリガー信号線が繋がってるよな……。何やってんだ俺のバカ!」と激しくセルフツッコミを入れたくなりましたが、これも良い勉強です(笑)。
同じような「電圧はあるのにセルが無反応」という症状でお困りの方は、スターターを分解する前に、この緑ライン(信号線カプラー)が緩んで外れかけていないか、真っ先にチェックすることを強くお勧めします!
緊急時の最終兵器!「プランジャー強制スタートボタン」の到着と装着
リビルドパーツを組むのと同時に、もう一つ買っておいた「最終兵器」がありました。
それが、万が一スターターリレーやハンドル周りの配線スイッチが物理的に死んでも、外からソレノイド(プランジャー)を手動で直接グッと押し込んでセルを強制始動できる、魔法のカバーボタン「プランジャー強制スタートボタン(ソレノイドカバープッシュボタン)」です!
安物なのでてっきり安っぽいプレス鉄板のメッキかと思っていたら、まさかの「アルミ削り出しアルマイト加工」で、クオリティが高くてちょっとビックリ。
ボタン部分の防水Oリングがかなりキツキツだったので、スムーズに押し込めるようにシリコングリスを薄く塗布してから組み立てました。
ボタンのパーツを組む向きは、こちらの写真の通りです。
裏側から見ると、このような構造になります。届いた時に仮組みされていた向きが間違っており、「このままだとボタンを押した時に取れちゃうんじゃない?」と疑問だったのですが、分解してみたら組み方の順番が違っていました。海外通販ストアなどの商品説明写真でも逆向きに組んだ間違った写真を載っけていたりするので注意が必要です!
マフラー横のタイトなスペースに加え、近くを通るオイルラインが少しボタンカバーに干渉して、ボルト留めするのに少々苦労しましたが、なんとか無事に装着完了!
ボタンを押してみると、中のスプリングがかなり硬く、かなり力を入れてグイッと押し込まないとプランジャーが奥の接点まで届いてセルを回すことはできません。でも、これくらいカチッとしていた方が誤動作しなくて安全ですね。
作業が終わり、テストがてら近所を軽く走り回ってみたのですが……なんと、コンビニの駐車場に入って再始動しようとした瞬間、またしてもセルが無反応(笑)。
しかし、今回は「最終兵器」があります!
慌てず騒がず、右側のセルモーター下部にあるマニュアルボタンを親指でグッと力強く押し込んでみたところ……
「ギュルンッ!ドコドンッ!!」
一発で見事にエンジンが目覚めました!本当に付けておいてよかった強制ボタン、神パーツです!
でも、プランジャーを新品にしたのに、なぜまたセルが回らなくなったのか?
犯人はやはり、あの緑の「スターター信号線」でした。新しく買ったボタン付きカバーをマフラー横の狭い隙間からグリグリと押し込んで付け替えた際に、またあの緩いカプラーが引っ張られて抜け落ちていたのです。
この差込口(写真の赤丸部分)ですね。
メスカプラー側のツメが経年劣化でバカになっていて、手で引っ張るとスッと抜けてしまう状態でした。
とりあえずプライヤーで端子のカシメ(噛み合わせ)を少しきつく調整して、ツメを補修してカチッと奥までハメ直したところ、今度はメインスイッチ側のセルボタンでも一発でギュルギュルと元気よく始動してくれるようになりました!
セルモーター本体のプランジャーと接点もリフレッシュでき、信号線のカプラーのバカになっていた部分も補修でき、さらに「万が一の時のための緊急強制スタートボタン」というお守りカスタムまで手に入り、結果としては大満足の、中身の濃いDIY整備になりました!



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